2020年08月08日

恋の行方16

私の隣に座っていたはずのビニールがいない。












雪乃と法子ちゃんの視線も前方のNとMにではなく入り口付近に注がれていた。



その皆の視線を辿ると








入り口付近で嬉しそうに踊るビニールの姿があった。













静かに手をヒラヒラさせながら盆踊り風に踊るビニール












しかもビニール









我々のほうには背を向け、入り口横の窓側付近で嬉しそうに踊っていた。










窓際で踊るビニール














我々の部屋の前を通り過ぎていく人々が何か見てはイケないものを見てしまったかの様な形相で通り過ぎていく。










山下・・・




ビニール山下・・・










その時、先程まで何を歌うか一生懸命に分厚いカラオケの一覧表に集中していたKが異変に気がつく。





大笑いしながらビニールを見てKが一言









「いけー!!山下!!!!」









その一言でビニールの小さな脳に炎が燃え上がる








「ホウホウ!ヒャ―!!!!」














ブー!
ブー!
ブー!





緊急警報!
緊急警報!




ビニール破れる!
ビニール破れる!



直ちに避難せよ!









緊急警報・・・

緊急警報・・・




ビニール破れる・・



ビニール破れ・・














何かが憑依したかの様に雄叫びをあげ、激しい手拍子で踊りだすビニール。










しかも、その手拍子が曲と全く合っていない。









この姿どこかで見た事がある。





そうだ・・あれはNHKの教育番組






チンパンジーの縄張り争いでボスの座を狙うナンバー2のチンパンジーがボスを威嚇している時の姿にそっくりだった。









もしこのカラオケルームの中央にヒモで吊るされたタイヤと部屋の隅に簡単な水のみ場があったら・・・













ここはカラオケルームではなく、チンパンジーの檻の中だ。










お構いナシに踊るビニール





ビニールの叫び声が激しくなる度に我々の心の中には涼しげな風が通り抜けていった。
そして…




全てが終わった

…完
posted by けつげしげる at 17:50| Comment(0) | 日記

恋の行方15

「何してる・・?」



我々に背を向け・・・

微動だにせず・・・



ひたすら窓に顔を押し当て背を向けるビニール





その姿・・・






必死に木にへばり付いている瀕死のセミの様









「コッチに来いよ」



ビニール山下ならぬビニール蝉下に優しく声をかける。







恥かしそうにコチラを振り向くビニール蝉



どうしようかなぁ〜・・


そんな顔をしながらソファーに近づく蝉人間ビニール






モジモジしながらニヤニヤ笑うムカつく蝉が一匹紛れ込んだ





いや・・・



ビニール蝉下というよりは・・










“ビニール蝉以下”

という名前のほうが合っているかもしれない。










その笑顔が妙に腹立たしいが、腹立たしいより気持ち悪いほうが優先してしまい、もう一度窓に張り付いていろと言いたいがココはグッと堪えて



大人のマナーを優先。









「何をしてるの?」

優しく問い掛ける私。







その時の私・・・

友達に話し掛けると言うよりは・・・









人間に対して心閉ざしたチンパンジーを必死に保護するボランティア団体のそれに近い状態であった。








先程まで怯えながら窓にヘバりついていたビニール蝉以下







クチ半開きの素敵なお顔で










「テーブルに座ると歌わないとイケないルールじゃん」




と一言、私に物申す。











座るのはテーブルじゃねえよ・・・





ソファーだよ。




そう言いたいのを我慢







ソファーに座ったら歌わないとイケないルールもありません。









この違った意味で危ないリアルハッピー脳内破滅型アウトローのビニール君に、お早いお帰りをオススメしたい気持ちで胸一杯であるが、歌いたくないなら黙って座っていればよい話であって、わざわざ窓ガラスにへばりつく事は一切ない気がして仕方なかった。




でも・・・そこまで歌う事を拒否されると少し興味が出てくる。









人間の嫌な部分








聴きたい・・・


ちょっと聴きたいビニールソング・・・・








そんなビニールとの会話の中、Mとリモコンの取り合いをしていたNが入れた曲が室内に流れる。






ノリの良いテンポが部屋中に響き渡る。





ウケ狙いか、飛び跳ねて歌うNを見て

「俺もそれが歌いたかった!!」

と叫び、もう1本のマイクを握り、Nと一緒に歌い始めるM






大音量で飛び跳ねながら歌うNとMを見て笑う我々・・・・






しかし、前に出て歌うNとMの視線は歌詞が映し出されているモニターでもなければ我々のほうでもなかった。






その時、私もある異変に気がついた。


posted by けつげしげる at 17:44| Comment(0) | 日記